2002年の秋に高野先生の講演がNISHIのATHLETE'S WAVE(千駄ヶ谷)であったので聴いてきました。
話しの最初は正しい立ち方、歩き方という題でした。
「立つことは健康と知能を磨くこと」
「正しい立位姿勢がつくられるまで」
「正しい立位姿勢のつくりかた」
ぼくはたしか「すえつぐ選手は中盤からの加速がすごい(長い)ように見えますが、
なにか秘訣とかあるんでしょうか」みたいな抽象的な質問をして、
「特別なことはとくにしていない。砂浜とか坂は他大学よりも
やっているかもしれない。あとシーズン中は30から80の加速走や
ダッシュは毎日くらいやっている」とおっしゃってました。

自分自身、今年の7月から8月にかけてかなりいい感じで200の練習のタイムが
出たのですが、その要因の1つに高野先生の講演があったということに
気づきました。それは走るイメージでした。正直まともな走練習なんて
週2回程度なので練習時のイメージを良くすることに専念していました。
高野先生の何がヒントになったかというと、
「意識的には前にPUSHするくらいの感覚で実際に真下に押せる」
という発言でした。
この感覚は良く練習のときに短距離のメンバーに
言ってたと思いますが、自分なりに大学のときから400とかは
そういう感じで走ったほうが結果は良かったことを実感していました。
ただ、今から考えるとこの講演のときに高野先生が言っていたこと
が今年ずっと意識のかたすみに残っていたような気がします。

上にも書きましたが、これは自分が400でスピードをできるだけ殺さずに
走るときの感覚に似ていました。できるだけはずまないようにひたすら
リラックスして足を前に運ぶことに集中するときはこんな感じでした。
ただ100とか200でやろうとすると難しい。でも実際100で記録の出たとき
(僕の場合100で追風2,3mのときで調子のいいとき)は中盤から後半にかけて
なんかブレーキをかけるぐらいの感じで足が前に出ていた(前にPUSHする感じ)
ような感じです。こういう感じのほうが力んで回転させようとするより
も明らかに疾走速度の低下は少ないんだろうと思います。
うまく加速にのってスピードが出ている体を、極端にいうとただリズムを
うまくとるために足を前に出して押してやる(支える)感じです。
だからやっていることは上に書いたようにほんとに前にPUSHするだけ。
もちろん中盤にかけての加速で絶対スピードをあげておかないとタイムは出ませんし
バランスのとれた筋力が必要になります。

11月号の陸マガですえつぐ選手の10秒3(手動)の走りを見ると、今と比較できないほど
浮いています。あのフォームで10秒3なんだから素質があることはたしかなんですが、
やはり重要なことは、彼があそこから0.5秒短縮するためにやってきたことが
今実を結んでいるということです。フォームは劇的に変わっています。
フォームというよりも走り方でしょうか。

ではなぜ前にPUSHする感覚なのかというと、
高野先生は次のようなことを言ってました。「テニスをするときに瞬間的にラケットにボールが
あたる軌道よりも、当たるポイントがいっぱいあったほうがいい」「水面に浮いている
船を押す時に、バットでおもいっきりたたくよりも、押した方がぜんぜん簡単に動く」
確かにそのとおりです。接地は瞬間的な動作ですから、押している暇なんか
ないのですが、感覚的にたたくのではなく押す感じです。上下動を少なくして
前に進むには体のどういう部分を鍛えなくてはならないのか自然に見えてくる
かもしれません。

渡された紙に書いてある内容のほんの一部
歩行    姿勢、体幹部の意識
JOG    真下に接地して上下に楽に弾む⇒徐々に接地を前に&水平方向に弾み、
      乗り込みを意識する。
テンポ走  接地時の腕振りのタイミングを意識、上下の動きに前後の
      切り返しの動きを入れて、推進力が増してゆく感覚をつかむ

スプリント練習時にはもっとも意識することは言うまでもない!
上の文章で、乗り込みとありますが、100の速い選手とかを見てると
ほとんど接地した瞬間に体幹部付近がスムーズにのりこんでいるのが
よくわかります。体の使い方がうまいというふうにも見えます。
体幹部周辺の筋肉を強化する必要がありそうです。

高野先生が書いていたたたくとPUSHの違いのイメージ図はこちらです。
あくまでもイメージ図です。
「直線的に接地ポイントに足を運ぶ」ということをおっしゃっていました。
これは、例えば、歩行のスピードだと、障害物があればよけて接地する
余裕がありますが、たたくイメージだとよけるのが難しい。
ちょっとそれますが、表面が凍結している湖面を足で
確認するときに、足を左右前後にそおっと動かしますが、こんな感じでしょうか。

足の速い人は、キックした足が離れてから重心の下まで
もってくるスピードが速い人が早いらしいです。


中途半端ですが以上です。ではいったい、どういう練習をしたらいいのかということを
知りたい方はあとで東海大の練習メニューを渡します。参考にはなるかもしれません。

すえつぐ選手の2003年日本選手権決勝(20秒03)の120mから140m付近のフォームです。
実際に陸マガ7月号?を見たほうがぜんぜんいいです(笑)
一流選手のトップフォームはいつ見てもいいです。

2006/3/15(陸マガ)
為末選手
スプリントサーキット
ハードルドリル+100mミニハードル+メディシンボール投げ×10
+100m+V字腹筋×20+100mスキップ+ランジ×20+100m+スクワットジャンプ×10
+350~100
地面を踏む補強を行ってから踏む動作を意識して走り、
脚を引き上げる補強を行ってから引き上げる動作を
意識して走る。
この練習を取り入れたことにより、手足のタイミングが合うようになり始めた。
両手両足が振り子のほうじ動いて、地面に重心がのっかかる瞬間に
全身が地面に押し付けられるような感覚を感じ始めた。